日進ムーンウォーカー

Alien to people, Behind people, Closed to people, Distant from people, Eliminate me Fujita

APMキャラクターエッセイ⑧「あかちゃんまん」

誰の子?石田純一

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https://www.anpanman.jp/about/friends/ljr3ru2sy0bmgkna.html

ポケモンずかん以下のクオリティの公式解説

https://tgws.plus/anpandb/akachanman

↑懇切丁寧なキャラクター解説に定評のあるDB

 

はいはいつよいつよい

精力的に更新を続けてきた当シリーズも8回目を数える。これからも”我にかえ”らないよう、気をつけていきたい。

これまで、やかましいモブ・モブ・モブ・鉄クズ・怪人・よくいるモブ・怪人と、絶妙に王道を外した人選でやってきた。今回とうとう、ワールドの平和を守る戦闘員をフィーチャーする運びとなった!

と言ったが、実はこのあかちゃんまん、アニメにはそんな頻繁には出てこない。

DBによれば、映画出演を除くとちゃんと登場した回は合計24回しかない。テレビアニメアンパンマンはこれまでトータル約1500話を放送してきたので、出演率は2%を切る。この数字は、遊戯王TCGで任意のパックを購入したときウルトラレアのカードを引き当てる確率より低い。

にも関わらず、ワールド随一の人気キャラである。おそらく、庇護欲かきたてる愛くるしいルックスで一本勝ちしているのだろう。なんと、JAこども共済のCMキャラクターまで務めている!

てんどんまんじゃダメなんですか?(蓮舫

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共済に加入するでちゅ!

絵しか見たことないという人は多いだろう。そんな人も安心して欲しい。やなせたかし投手はストレートしか投げてこない。見てくれを微塵も裏切らない。

1992年放映、3つの短編からなる劇場版第4作同時上映「アンパンマンとゆかいな仲間たち」の第1話目「あかちゃんまんの大冒険」では、その真価が存分に、存分すぎるほど発揮されている。これを見ずしてあかちゃんまんを語ることはできない。全力で話を追う。

また、1995年放送「ロールパンナとあかちゃんまん」の概要も合わせて追ってみる。ロールパンナも、人気の割にそんなしょっちゅう出るキャラじゃない。ポケモンのタッグバトルで、相手がザングースハブネーク繰り出してきたときぐらいにはアツい。結構珍しい絵が多いのでオススメの回である。

 

経験上長尺不可避なので、スペルカード「離脱」を貼っておきます(H×H)

(数えたら90行ありました)

 

 

あかちゃんまんの大冒険

氏のプライベート空間から映像が始まる。ちなみに、氏の自宅周辺の映像も流れ、しっかりプライバシーが侵害される。共済のCMキャラクターをも務める著名人の氏には自覚が要求されるだろう。

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眠れる獅子


カニシカ王像みたいなアンパンマンおるな。待って?普段ある両側頭部の球上の物体って何なの?

どうでもいいのでどんどん先へ話を進めたいのだが、ここでどうしても触れないではおけない点がある。ナレーションである。

曰く、「ゆっくりねんねなさいね、かわいい天使さん」。

 

誰?石田純一

映像に声の主とおぼしき人物の影や気配はない。天の声か。山里?もし実の親なら、ちょっといろいろ従来のイメージと衝突する。

とりあえず保留にする。ねんねナレーション終了後数秒のうちに、氏を大声で呼んで安眠を妨げつつ、窓から侵入してくる信じられない無礼者が現れる。こやつはミルクぼうやで、氏を大幅強化する特殊能力をもつチューナーである。無作法も詫びず、ジャムおじさんたちのピンチを伝え救援要請。氏は寛大にも快諾し、ミルクを10秒チャージすると、寝起き数秒にも関わらずジャムおじさんらのもとへ馳せ参じる。殊勝なことではないか!

ジャムおじさん、バタコさん、アンパンマンの三名は、「悪魔の森」にて「悪魔大王」「悪魔女王」を自称するBKMとDQNに拘束されていた。ロッチの漫才を彷彿とさせる。そこへ氏が見参。が、早速ハエ取り草みたいな拘束具にマントとミルクニキを奪われてしまう。BKMが興奮して言う「マントとミルクがなければ、あかちゃんまんなんてただの赤ちゃんだ!」。拘束された4名は「ばいきんドーム」なる遊園地風の施設へ連行される(イオンは併設してない)。

BKMが指令を下すと、森の木々が応じて氏を包囲する。木だと思われていたものは、無数のばいきんメカだった!地響きを轟かせて歩いていたところから、かなり重量級のメカだろう。「かかれー!」の合図とともに全軍、氏と追いついたチーズをめがけてボディプレス!年端もいかない幼子を金属塊で圧殺して盛大な高笑いを放つ、キチガイ地獄外道。

一方ばいきん遊園地では、超高速で稼働するジェットコースターやウォータースライダーにされるがままの4名。遠心分離機ばりに高速で回転する観覧車には明確な殺意が見て取れた。日々キチガイJGの猛攻に耐えそれを退ける、超人的に頑丈なAPMはまだいい。問題は非戦闘員の2名にも同様の仕打ちをしていることである。でもこれは思えば、米軍による軍需工場空爆みたいなものか。

遊園地へ軽い足取りで向かうキチガイJG。ふいに、背後から異音が。

JGの悪い予感は的中だった。そこには、片腕一本で全メカの総重量を支え、こちらを睨むあかさんまん先生が。”まさに外道” 先生は振りかぶりもせず(!)メカを投げ捨てる。JGは下敷きになって死ぬ。

先生が遊園地もとい処刑場に到着すると、APM一行を苦しめていた超高速ジェットコースターに誤乗車してしまうが、リミッター解除(速攻魔法)して攻撃力が倍になった各アトラクションを(JGの意に反して)むしろ楽しむ先生。一方同伴のチーズと、先回りしていたDQNら常人(犬)が巻き添えを食らう。

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スチールドラゴン

JGキレて、「ワニをけしかけるボタン」(仮称)を押して「ワニをけしかける」。常識的に考えたらかなり地獄外道ポイントの高い悪業だが、なにせ先生が既に非常識なので、なんなら生やさしいぐらいである。ワニにアースクエイクスロー(ムシキングヘラクレスリッキーブルーのひっさつわざ)をキメ、優勝する。

理性のたがが外れたJGは先生を誘導すると、煮えたぎる溶岩へ続くコースターに乗車させ、火葬しようとする。復讐心に駆られたJGにはいささかのモラリティも残されていない!しかし、なんかよく分からんけど先生はこれも回避する。

最終局面。先生を下図のようなモグラ叩き装置に誘導する。

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今回APMはひたすらボコられて終わる

人型ばいきんメカ・だだんだん三号を操るJGとDQNは、特大のハンマーでモグラ叩きを開始する。おぞましくも、民間人二名に対してもハンマーを振り下ろし殴打する!

小柄な先生にハンマーが当たらなかったことでJGの不満が頂点に達し、三階建ての一軒家ぐらいある金属のハンマーに持ち替えて、今度こそ圧殺しようとする。ハンマーを振り上げた隙にミルクを補給した先生は、七歩歩み出て天地を指さし、天上天下唯我独尊モードに突入。

遮二無二振り回されるハンマーを全て受けきる!「許ちまちぇん!」「もう怒ったでちゅよ!」死刑宣告。JG&DQNは、だだんだんもろとも彼岸の果てまで投げ飛ばされる。

その後、遊園地は先生仕様に改装され、F*CKIN’ ANIMALSが楽しげに遊ぶ映像が映し出される。一仕事終えた先生は、迎えに来たコウノトリ(!?)に乗って帰還する。

そんな冒険してなくね?

 

 

 「ロールパンナとあかちゃんまん」

パン工場に予定時刻に現れないインド人、あかちゃんまん。

一方、一本もラインをひかない奇妙なドッジボールを楽しむチーム動物園の皆さんのもとへ、暇を持て余した神・BKMが襲来。坂道を転げ落ちるまで追い回した挙げ句、ボールを破裂させて満面の笑み。これ、この理不尽こそ神のそれである。Divine

理解できないぐらい理不尽な仕打ちにカバお、怒りの抗議!「なんてことするんだ!!」

そんな彼らにあろうことか、神は「お詫びのプレゼント」などと言って、彼らを追跡するばいきんまんの頭部を模した球体を発射する。「うわ~!」逃げ惑う民。

人は・・・”神”を恐れるのではない・・・”恐怖”こそが”神”なのだ ーー”神”エネル

そこへあかちゃんまん!いや、おま道草食わんとはよ工場行け!

神にまず一撃を食らわせる。戦闘態勢に入る神は、一連の応酬を見物しているロールパンナを発見する。命じて曰く「あかちゃんまんをやっつけるんだ!」

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槇原敬之の再逮捕を知ったロールパンナ

速攻闇堕ちし戦闘に突入。しかし若干の攻防ののち、あかちゃんまんは急に活力が萎えて幼児退行、いや乳児退行する(いや本来乳児だが)。あかちゃんまんさんとは初対面のロールパンナは呆然。どうも腹が減ると乳児モードになるという。

スニッカーズやん!

神は一計を案じる。ロールパンナにあかちゃんまんを見張らせ、自分は基地へ撤収する。神に翻弄される動物園の愚衆にメッセージを授けて工場へ走らせる。あかちゃんまんをエサにアンパンマンをおびき寄せようというのだ。

この間、一般赤ちゃんと化したあかちゃんまんの要は子守をするロールパンナは、「さっきまで強かったのに・・・」と漏らす。やがて泣き喚きだすあかちゃんまんを慣れない手つきであやす。微妙な空気感。泣く子と地頭とアンパンマンには勝てない。

あかちゃんまんを基地に連れ帰る。そこへ救出部隊が基地に到着。あかちゃんまんを解放しようとするアンパンマンら救出部隊は、神の罠[divine trap]に陥り拘束されてしまう。神は彼らを崖から突き落として殺害しようとする。NO MERCY!

しかし、神にとっての一大誤算があった。救出メンバーにメロンパンナがいたのだ。パン工場入り浸り指数的にはさほど高くないメロンパンナがたまたま今回居合わせるという不幸のために、ロールパンナの良心が覚醒する。ロールパンナメロンパンナを救出し、あかちゃんまんにミルクを与えると、本調子ベビーはアンパンマンの拘束具を秒で破壊し、神に鉄拳を叩き込む。失楽園

 

 

離脱(リーブ)オン!マサドラへ!

情報を簡潔に要約する能力を養いたいと思う今日この頃である。

 

ところでDBによると、やなせたかしは「あかちゃんまんが一番強い」と言っているらしい。

これは注目に値する。やなせたかしは、””””””””””神””””””””””である。そのたかし神がそのように仰るということは、そういうことなのである。

確かに「大冒険」での強さは異常だった。H×Hのメルエムぐらい非常識な強さだった。疑念の余地なくワールド最強クラスだ。その一方、乳児モードのときはワールド最弱まである。エニエス・ロビーぐらいのときのギア3使用前と使用後のルフィに似てる。

 乳児モードのあかちゃんまんを攻撃できるなら、それこそキチガイ地獄外道の極みである。「大冒険」では、ばいきんまんは「マントとミルクがなければただの赤ちゃんだ!」と高らかに言いながらあかちゃんまんに危害を加えた(加わらなかったが)。相手が「ただの赤ちゃん」と認識しながら凶行に及んだのである。これが彼がキチガイ地獄外道と呼ばれて然るべき所以である。ロールパンナ回では辛うじて倫理観を回復していたが、人間の心がありながらにしてあかちゃんまんを殴れる者などいない。そんなものは畜生である。

 

そもそもこのキャラクターの異質さに皆さんはお気づきだろうか。繰り返し述べているが、だいたいどのキャラクターにも、固有のアイデンティティやモチーフの類いがある。このキャラクターは、「時間(期間)」にアイデンティティを持っている。「にんげんマン」ではない。

一方「おじいちゃんマン」はいない。いてはたまらない。老いは死を含意する。「おじいちゃんマン」ほど露骨に「老い」をクローズアップしてしまうと、「死」もまた強く意識され、ワールドの秩序を揺るがしうる。

そんなワールドにとってタブー的存在の「おじいちゃんマン」であるが、『マクベス』には「きれいは汚い、汚いはきれい」という台詞がある。あかちゃんまんは、コントラストによって「おじいちゃんマン」を、老いを、死を暗に示してしまうのだ。

ワールドにとって、「時間」がそもそも危ない代物である。第二回以降、ワールドにおける「時間」の問題は絶えず懸案となり続けている。

前回、「くらやみ」は非時間的なモチーフだと書いた。そこには他のモチーフが”時間的”だという含みがあるが、その”時間”はあくまで巡る、あるいは巡りうる時間である。ヤマザキ「薄皮つぶあんパン」の製造ラインを思い浮かべて欲しい。しかし、あかちゃんまんが仄めかしてしまう”時間”はそうではなく、Linerな時間である。まだ(!)我々は、互いにDistinctiveな存在である。DNAの差異を論うのではない。「Aである」とは、「Aを、A以外の全てのものから区別することができる」という意味である。

とこのことに言及して気づいたのだが、アンパンマンは、APMワールドから”時間の流れ”を奪っている諸要素の一つであるかもしれない。

Problematicなのは、「顔」である。「新しい顔に交換する」「交換可能性」、個々の顔がIndistinctiveであることが明示される。

 

パン戦士 vs あかちゃんまん。

エグい字面だが、「没個性時代」の我々は、まさに迫り来るパン戦士たちをなぎ払い進まなければならない。

 

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没個性時代