工場初の大量発注
コロナが騒がれだす直前に、フラフラ先輩についていってインドになど行ってきた。
行きの飛行機でうつらうつらしていたところ、「インドの州を覚えよ」というプラジャーパティの確かな声を聞いて州記憶にとりかかり、かなり悪戦苦闘していた。
第二回はインドの州である。
非ヨーロッパ系の外国語は、総じて覚えづらい。奴らをこなす消化酵素を持ってないからだ。すぐに腹を下してしまう。
しかし、前回の執筆(こう書くとなんか偉そうに聞こえるが)を終えて、情熱が再燃してきた。この機会なので、マムシの丼を全部平らげる。
インドには、28の州と9つの連邦直轄領があるらしい。州の数だけなら東京メトロ丸ノ内線の駅の数ぐらいだ。9つの、なんだろ、冷凍小籠包みたいなやつはとりあえず置いておく。
州を覚えるのだから、位置関係と一緒に覚えないのでは意味が無い。これが2番目に厄介だ。
飛行機でやったのは、インドを大胆に長方形にデフォルメして、レンガの壁面みたいにして覚えた。問題は、デフォルメしすぎて元の姿が再現できなかったことである。
しかし、デフォルメ作戦は覚える上ではだいぶ効果があったと思う。「横」とか「上」とか、あるいは「列」とか「行」とか、単純な位置関係で覚えられたからである。
当時のメモはおそらくインド亜大陸のチリになったので、1からやりなおしである。
あれから進化した私は、Exelを使ってみた。
完成度!
こんなことなら、はじめからこっちでやればよかった。これで名前と位置関係以外の全ての情報が捨象された。あとは名詞を覚えていくだけだ。ちなみに、デリーはハリヤナ州の右下にある。
確かにけっこう歪んではいる。別にメルカトル図法というわけではないのに、最北端ジャンムー・カシミール州が異様に膨張している。草。
実は、ジャンムー・カシミール州は2019年をもって冷凍小籠包となった。なったけど、ここでは州として扱うことにする。
4つの部分に分解する。
①ジャンムー・カシミール州と下の4つの州(左上エリア)
②西はラジャスタン州、グジャラート州、マハラーシュトラ州から、東は西ベンガル州までの10州(左中央エリア)
③その下の6つの州(左下エリア)
④右のヤツ(右エリア)
①左上エリア
ジャンムー・カシミール、パンジャーブ、ハリヤナ、ウッタラカンド、ヒマーチャル・プラデーシュ。
ぱっと見で思いついたのは、反時計回りに「ジャパンは売ったら暇(ジャ、パン、ハ、ウッタラ、ヒマ)」という語呂合わせだったが、これだとハリヤナ成分が弱すぎて思い出せる自信が無い。
ジャンムー・カシミールは夏と冬で州都が変わるトリッキーな州である。しかし、「外務省海外安全ホームページ」で半分以上の地域に退避勧告または渡航中止勧告が出されている修羅の大地でもある。
②左中エリア
ここが最難関。キツいので、さらに部分に分ける。
左側の左一列、ラジャスタン州、グジャラート州、マハラーシュトラ州は、困ったときの必殺技「リズムで覚える」戦法で行こうと思う。「ラジャ・グジャ・マハラ」で。ただこれだとラジャとグジャを混同する心配が多分にある。
ラジャスタン州はインド最大の州でインダス文明の起こった地である。グジャラート州はガンディーとモディ生誕の地で、インド最長の海岸線を生かしインドで流通する塩の80%を産生する。海のある方が下で、ガンディーといえば塩の行進、と連想すれば区別がつく。
隣の列、ウッタルプラデーシュ州、マッディヤ・プラデーシュ州。
というか、プラデーシュって何?ググったところ、どうやら「province」をヒンディー語風に言ったものらしい。じゃあ、「プラデーシュ州」って「希望王ホープ」みたになってるやんけ!
いまいちいい覚え方が浮かばないが、日々ゲームに明け暮れている少年の家庭を想像して、耐えかねた少年の母が「(ハードオフに)売ったる!」とゲーム機を取り上げると、少年が涙声で「待っでや!」と容赦を懇願する、とか。たかだか2つ覚えるだけで情報量が多い。ウッタルプラデーシュはウッタラカンド州の真下なので覚えやすい。
右半分、ビハール、チャッティスガール、オリッサ、ジャールカンド。西ベンガルは、位置と名前にクセがあるので多分わかる。西ベンガルを除いた4つを、反時計回りに「ビチャビチャなおじゃる丸(ビ、チャ、オ、ジャ)」の語呂で覚えるのはどうか。全部頭の一文字なので、先に州名が頭に入ってないと思い出せず、相当不親切な語呂ではある。これ以上浮かばん。
③左下エリア
忘れないように言っておくと、ゴアも州である。州の中では面積が最小。
ゴア、カルナータカ、ケララ、タミル・ナドゥ、アンドラ・プラデーシュ、テランガナ。
通例となっているように反時計回りで「ゴマかけたアンテナ」(ゴア、カ、ケ、タ、アン、テ-ナ)で行こう。不親切さはいつも通りである。
ゴアの位置を知っていれば、左下を思い出そうとしたとき、反時計回りだからゴアあたりから始まったような気がする、とつなげられる。
④右エリア
シッキム、アッサム、メガラヤ、トリプラ、ミゾラム、マニプラ、ナガランド、アルナーチャル・プラデーシュ。
四文字系の区別が曖昧になってくる。シッキム州、アッサム州は「漆器漁る」で覚え、ここから「メガトリプル未曾有のマネーが長島スパーランドにあるな」(メガ、トリプラ、ミゾ、マニ、ナガランド、アルナ)で一挙に覚える。なんか、ドカ盛りって感じの文だな。
冴えない!
これまで出てきたアレを振り返ると、
(ジャンムー・カシミール州なのでジャから始めて)ジャパンは売ったら暇、(左下に行って呪文)ラジャ・グジャ・マハラ、(右行ってウッタルプラデーシュの真下の)売ったる、待てや、(ベンガル湾にダイブして)ビチャビチャのおじゃる丸、西ベンガル(直球)、(左サイドの仕上げに)ゴマかけたアンテナ、漆器漁る、メガトリプル未曾有のマネーが長スパにあるな。
これを覚えるほうがしんどいのではないか。
少し時間をおいて暗唱してみたが、さすがに考案者なので2分弱くらいかかったが全部言えた。ベンガル湾にダイブしてビチャビチャのおじゃる丸の部分が一番苦しい。
まず、「ベンガル湾にダイブしてビチャビチャのおじゃる丸」ってなんやねん。どういう文脈だったらそうなるのか。まず、ボケてるわけでもないのに海水浴で「太平洋に入った」とか言わない。そう言うと、飛行機とかヘリとかからベンガル湾のド真ん中に飛び降りてるように聞こえる。なにより、おじゃる丸はベンガル湾に来ない。あれか、竹取物語でかぐや姫に求婚した貴族で、遠洋まで舟出してたやつがいたような。
人生で一回ぐらい「デリーは何州にあるの?」「ガンディーの出身地は?」「インド最南端は?」程度の問題に直面することがあるだろう。
そんなときは、ググればいい。それを微塵も恥じることはない。
間違えても、「パンジャーブ州の南、ラジャスタン州の北であるところのハリヤナ州だよ」とか、「製塩業の盛んな、またモディの出身地でもあるところのグジャラート州だよ」とか、「ケララ州の東、アンドラ・プラデーシュの南であるところのタミル・ナドゥ州だよ」とか言ってはいけない。私はそんなやつと口をききたくない。