サークルを作りたい、と近頃しきりに考えている。
サークルを作りたいのだが、今の私には「サークルを作りたい」という熱意、ただそれだけしかない。
まず、サークルのコンテンツになりうる趣味・娯楽・競技ごとの類いがない。
そして、大学に志を同じくする知己がいない。
つまり、活動内容と人間が存在しないところから、サークルを作りたいと考えている。
スタメン1人という、このミジンコ規模のサークルにできることはなんだろう。
同業者はまず避けねばならない。こちらの規模がミジンコ並だからである。
しかしあまりにニッチなジャンルを攻め、学生諸君をぶっちぎって独走してしまっては意味が無い。
だから寧ろ、同業者が競合相手になりにくいジャンルを探る方がいい。人と何かを競うことや、用具用品にお金がかかること、知識や技術が要ることはコンテンツとして避ける。
そして、これから立ち上げようとするサークルは、少なくとも現時点では、「勉強・バイト・部活&サークル」の三本柱の一本を担うものにはなりえない。人と競ったり、用具用品にお金をかけたり、知識や技術を必要とするような「強いテーマ」がなく、さらにミジンコ規模だからである。
だから立ち上げ時点では、サークルには人々の余暇に割り込む権限さえ見込まない。人々の暮らしの中でできる隙間の時間にしれっと、ヌルッと入り込むことが理想である。参加する際の抵抗、参加することの代償を可能な限り減らすべきだ。
ということでコンテンツは、メシに関することがいいだろうと考えた。人間たるもの、生きんと欲せばメシを食うからである。
メシ関連コンテンツをサークルの主題に掲げるもう一つの利点は、昼休みに活動できるというところである。昼休みは、午後に授業がある場合大学を離れるわけにもいかず、昼メシを食う以上の活用が難しい微妙な時間である。その昼休みにメシを食うサークルがあれば、「自分の時間を割いてサークル活動をしている」という意識より「サークルの面々と昼メシを食っている」という意識が勝るだろう。つまり、サークル参加のハードルを「メシ食いにくる」程度まで下げることができるのだ。
しかし、同時に問題が生じる。あまりに参加の抵抗を減らし過ぎると、今度は参加者をサークルに留める力まで弱まってしまうのである。
これはしごく当然である。だから、「入りやすく出にくい」ネズミ捕りかゴキホイホイみたいな陰湿で最悪なサークルにしたい(したくない)。
メシというテーマは揺るがし難いので、メシを工夫するしかない。具体的には、わざわざサークルまで食いにくるようなメシにしたい。一つの例として、ご馳走である。
ニホンのゴチソウというと、やはりスシである。ヤキニク、スキヤキなども考えられるが、徒歩圏内にそれらを提供できる店はないし、自分らで作るにしても大学構内で火を使うのは少々気が引ける。名古屋大学構内には、基本的に燃えると取り返しがつかないものしかない。仮にも誤って出火させたら、死を以てしても償えないほど大きな責任がミジンコ規模のサークルを襲うことになる。
一応の結論としては、スシをテイクアウトないしデリバリーして昼に食うサークルである。
大学から最も近い100円回転寿司チェーンは、3km弱のところにあるスシロー天白焼山店である。2限のない日の昼休み前に私がスシローでスシをテイクアウトして大学まで運び、それを参加者で適当に食べるといった感じである。
名古屋大学の学生は、昼休みの時間にスシを食う手段をほとんど持ち合わせていない。そこへ颯爽とスシローのスシを振る舞うサークルが現れたら、微妙に嬉しいではないか。
この案について識者の方に意見を求めたところ、まだこの集まりを「食事会」以上のものにする何かを欠いているとの指摘を受けた。
尤もである。継続的に活動するための工夫、スシを食うだけでないプラスαが要求されるわけなのだが、そこで真に私のサークル運営の手腕が試されそうである。ただそれに関しては、実際にどれだけのどういう人間が集まるのか(まず人間が集まるのか)を見て判断したい。
週1の昼の活動を軸にして、時々週末や業後に良いスシを食べにいったり、集まりを設けるのが妥当な線かなと考えている。人が来れば。
しかし一方で、テーブルなどをどこに保管するの問題などもある。茂みに隠すみたいなことはしたくないので、意外と悩みどころである。また、どのようにスシ代を徴収するか問題、スシ残ったらどうする問題、夏場スシ大丈夫か問題、ゴミどうする問題、昼休み中にちゃんと撤収して3限行けるのか問題など、細々した問題は山積みである。
2年前の入学直後、新歓を渡り歩いて方々でタダ飯を頂き、非常な感動を覚えた。シンプルに新歓が楽しかったというのもある。ミジンコの分際で出過ぎたマネだが、サークルを立ち上げたら折角なので新歓ぐらいしたい。あくまで新入生勧誘会「新勧」でなく、「新歓」である。
そうとなると、あまり悠長に企画している時間はない。些事にとらわれずに鋭意企画を進めたいが、間違っても食中毒だけは起こさないようにしたい。食中毒をやったら、豊田講堂でのハラキリショーは免れない。あるいは、怒れる某企業の協賛により、ガソリンの浸みたゴムタイヤでグルグル巻きにされて火を付けられ、焼き殺されるかもしれない。県下最大のマフィアの怒りは買いたくない。(2212字)